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正解のないAI時代、リーダーに必要なのは「方向を示す力」

正解のないAI時代、リーダーに必要なのは「方向を示す力」

正解のないAI時代、リーダーに必要なのは「方向を示す力」

山本 桜子

AI Research Strategist

With no right answer in the AI era, leaders need the power to set direction

With no right answer in the AI era, leaders need the power to set direction

With no right answer in the AI era, leaders need the power to set direction

正解を知らないリーダーは、失格か?

どのAIに投資するのか。どこまで仕事を任せるのか。今ある職種や組織を、どこまで変えるのか。

数年前には正解に見えた選択が、半年後には見直される。AIをめぐる経営判断では、そんな状況が珍しくなくなっています。

前回の記事では、AI時代の管理職には、人とAIの役割を分け、仕事そのものを設計する役割が加わると述べました。

しかし、仕事を設計する側に判断軸がなければ、現場は迷います。

「AIを積極的に使おう」と言われた翌月には、「リスクがあるから慎重に」と言われる。新しい施策が始まるたびに優先順位が変わる。

変化すること自体が問題なのではありません。

問題は、何を基準に判断が変わったのかが見えないことです。



「答えを持っている人」より、「判断の軸を示せる人」へ

世界経済フォーラムの「Future of Jobs Report 2025」では、企業が重視する中核スキルとして「分析的思考」が69%で1位、「レジリエンス・柔軟性・適応力」が67%、「リーダーシップと社会的影響力」が61%と続いています。AI・ビッグデータは45%でした。

技術が進化するほど、技術知識だけでなく、変化の中で人を率い、判断する能力も求められていると見ることができます。

AIを前提に仕事を変えていくとき、経営やリーダーがすべての正解を先回りして示すことは困難です。だからこそ、正解が分からない状況でも、何を基準に進むのかを示し、その判断に責任を持つ姿勢が重要になります。

ここで一つ参考になるのが、Gravitas(グラビタス)という考え方です。

日本語では「重厚さ」「存在感」と訳されることがありますが、ここでいうGravitasは、単なる威厳や自信満々に断言する力ではありません。不確実な状況でも判断軸を示し、その結果への責任を引き受ける姿勢として捉えることができます。

分からないことは分からないと認める。それでも、何を目指すのか、何を守るのか、今回は何を基準に決めるのかを説明する。そして、結果への責任を引き受け、必要なら方針を修正する。

そうした行動の積み重ねが、組織が動くための信頼をつくります。



世界最大級の銀行も、「未来は分からない」と明言している

米国最大級の金融機関JPMorganChaseは、AIへ大規模な投資を続けています。

2026年の年次報告では、同行のテクノロジー関連予算は約198億ドル。生成AIを含むAI活用を全社で拡大しています。

一方、CEOのジェイミー・ダイモン氏はAIについて、将来が具体的にどう展開するかは「まだ分からない」という趣旨を明確に述べています。

それでも、「分からないから待つ」とはしていません。

顧客と社員のためにAIを活用するという方向は示す。一方で、AIによる新たなリスクを認識し、問題が起きた場合には率直に評価し、修正する必要があると説明しています。

つまり、未来を正確に予測しているから動けるのではありません。

「何のために使うのか」「何を守るのか」という軸を置いたうえで、状況に応じて手段を変えているのです。



日立が示す、「変えない目的」と「変える手段」

日本企業にも、同じ考え方が見られます。

日立製作所の德永俊昭CEOは、生成AIをはじめ事業環境が急速に変化する中では、将来を正確に見通すことは難しいとしたうえで、重要なのは変化に素早く対応する「アジリティ」だと述べています。

素早く判断し、仮に失敗しても修正する。一方で、「正しく物事を行うこと」以上に「正しいことを行うこと」が重要だとし、デジタルを中核とした企業への変革や社会への貢献という方向性を示しています。

実際、日立はAIの進展に合わせて組織も変えています。2025年にはAI・ソフトウェア関連の事業体制を強化し、2026年にはさらにAIを軸とした事業構造へ更新しました。

目的まで毎回変えるのではなく、目的へ近づくための手段を変える。

不確実な環境では、この区別が重要になります。



「異論を言えること」も、方向を示す力の一部

ただし、方向を示すことは、トップが一度決めた方針を押し通すことではありません。

ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン教授は、不確実性の高い環境で組織が学習するためには、メンバーが懸念や失敗、異論を安心して共有できる「心理的安全性」が重要だと研究してきました。

AI活用でも同じです。

「このAIの回答は危ないのではないか」
「この業務まで自動化すると、顧客体験が悪くならないか」

そうした現場の違和感が上がってこなければ、リーダーは判断を修正できません。

方向を示すことと、異論を聞くことは対立しません。

目的には一貫性を持ち、手段については学び続ける。

判断軸を示しながら、現場からの情報によって必要な修正を引き受ける。それもまた、不確実な状況で求められるGravitasの一つの表れではないでしょうか。



未来を当てるのではなく、組織が動ける判断軸をつくる

AI時代のリーダーに、すべての答えを知ることを求めるのは現実的ではありません。

必要なのは、まず三つを言葉にすることです。

何を実現したいのか。
何は守るのか。
どんな条件なら、今の方針を見直すのか。

そのうえで、判断理由を説明し、現場から異論や検証結果を受け取り、必要なら手段を変える。

今回のシリーズでは、まず社員が仕事を変えられる組織条件を考え、次に管理職が人とAIの仕事を設計する役割を考えてきました。

その二つを支える最後の土台が、経営・リーダーが示す判断軸です。

正解を言い切ることより、「何を基準に進むのか」を示す。

そして、その判断に責任を持ちながら、必要な修正を引き受ける。

AIの正解が変わり続ける時代だからこそ、その姿勢が組織を前へ進める力になります。



AIxができること

AIxは、AIを前提に企業の仕事・人材・組織のあり方を再設計し、実行まで支援する会社です。

独自のREWIREフレームワークを用いて、AI導入を単なるツール導入で終わらせず、業務プロセスや組織、人材まで含めて「AI時代にどう変えるべきか」を整理します。

人材領域では、企業やプロジェクトに必要なAI人材を定義し、適切な人材のマッチングやチーム組成まで支援しています。

AI活用によって何を実現するのか、何を守り、どの基準で投資・業務・人材について判断するのか。経営方針から現場の仕事まで、一貫したAI変革の軸を整理したい方は、ぜひAIxへご相談ください。



参考情報

SYS // AIx-OS

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