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PoCを生む人と、本番へ運ぶ人は違う:AI変革の二速駆動に欠けている「引き渡す人」

PoCを生む人と、本番へ運ぶ人は違う:AI変革の二速駆動に欠けている「引き渡す人」

PoCを生む人と、本番へ運ぶ人は違う:AI変革の二速駆動に欠けている「引き渡す人」

山本 桜子

AI Research Strategist

そのPoC、誰が本番まで運びますか?

「早く試してほしい。でも事故は起こさず、全社で使える形にしてほしい」。

AI推進の現場では、この二つの期待が同じ担当者やチームに集まりがちです。

現場と素早く試作を回すこと。データ基盤やセキュリティ、利用ルールを整えること。どちらも必要ですが、求められる動きは大きく異なります。

さらに見落とされやすいのが、試作を本番運用へ移す仕事です。PoCは「作れた」時点で終わりではありません。

世界的な経営コンサルティング会社であるBCGによると、AIを活用する組織の60%は、まだ大規模に実質的な価値を獲得できていません。

米調査会社のGartnerも、エージェント型AIプロジェクトの40%以上が2027年末までに中止されると予測しています。理由は、コストの高騰、事業価値の不明確さ、リスク管理の不備です。同社は、現状の多くが初期実験やPoCの段階にあるとも指摘しています。

問われているのは、AIの性能だけではありません。PoCを生む人と、それを本番へ運ぶ人の役割が、分けて設計されているかどうかです。



AI変革には「二つの速度」が必要になる

AIは数カ月単位で進化します。数年かけて要件を固めてから一気に導入するやり方では、完成時に前提となる技術が変わっているかもしれません。

そこで必要になるのが、二つの速度を同時に持つことです。

一つは、現場で小さく試し、数週間単位で改善する「探索」。もう一つは、データ、セキュリティ、評価基準、運用ルールを整え、全社で安全に使える形へ変える「制度化」です。

この二つでは、成功の定義が違います。探索では、仮説を早く試し、失敗から学ぶことに価値があります。一方、制度化では再現性や安全性が重視され、同じ失敗を繰り返さないことが求められます。

同じ人に両方を担わせ、同じ基準で測れば、探索側は失敗を避け、制度化側は「遅い」と評価されてしまいます。

二速駆動とは、時間の話だけではありません。役割と評価軸を分ける組織設計の話です。

先行企業も、一気に完成形を目指しているわけではない

米大手金融機関のGoldman Sachsは2025年1月時点で、生成AIアシスタント「GS AI Assistant」を約1万人の従業員へ提供し、同年中の全ナレッジワーカーへの展開を目指す方針を示しました。

CIOのマルコ・アルジェンティ氏は、この段階をプログラム進化の「第一段階」と説明しています。

重要なのは、最初から完成形を全社員へ配ったのではなく、利用範囲を広げながら進めている点です。BCGも、1〜2の高価値領域から始め、パイロットを通じてガバナンスやデータ基盤を固めながら拡大する道筋を示しています。

試す動きと、整える動きを同時に進める。

その噛み合わせを支えるのは、仕組みだけでなく人の配置です。



二速駆動には、二種類の人だけでなく「引き渡す人」が必要

ここで、「AI人材」という言葉を一度ほどいてみます。

仮説を素早く形にし、うまくいかなければ捨てて次へ進める探索担当。安全性や再現性を確かめながら、ルールや基盤を粘り強く整える制度化担当。どちらも欠かせませんが、得意とする人は必ずしも同じではありません。

ただ、二つに分けるだけでは足りません。さらに必要なのが、その間をつなぐ役割です。

この役割に近いものとして近年注目されているのが、「FDE(Forward Deployed Engineer)」です。米データ分析企業のPalantir Technologiesなどで知られる職種で、顧客や現場に入り込み、技術を実際の業務に定着させる役割を担います。

現場のユースケースを理解し、技術へ落とし、PoCを作る。そのうえで情報システム、セキュリティ、事業部門をつなぎ、本番へ持っていく。

どの試作を本番へ進めるのか。何を共通基盤に取り込むのか。どの時点で法務やセキュリティ部門を巻き込むのか。こうした「引き渡し」の判断と実務を担う人がいなければ、良いPoCをいくつ作っても変革にはつながりません。

探索と制度化を分けたうえで、その間を翻訳し、実装まで運ぶ役割を置く。二速駆動は、この三つがそろって初めて回り始めます。



作ったPoCの数より、「運ばれた数」を見る

自社のAI施策を振り返ったとき、作られたPoCの数は把握していても、本番に移ったものの数や、移らなかった理由まで説明できるでしょうか。

もし引き渡しが、特定の担当者の熱意や兼務での残業によってなんとか成り立っているなら、それは組織の仕組みを個人の頑張りが肩代わりしている状態かもしれません。

試す人、整える人、そして運ぶ人。それぞれが誰で、何を成果として評価されているのか。その輪郭がはっきりしたとき、PoCは「実験の記録」から「変革の起点」へと変わっていくはずです。



AIxができること

AIxは、AIを前提に企業の仕事・人材・組織のあり方を再設計し、実行まで支援する会社です。

独自のREWIREフレームワークを用いて、AI導入を単なるツール導入で終わらせず、業務プロセスや組織、人材まで含めて「AI時代にどう変えるべきか」を整理します。

人材領域では、企業やプロジェクトに必要なAI人材を定義し、適切な人材のマッチングやチーム組成まで支援しています。

探索や制度化を担う人材に加え、現場とIT・セキュリティ部門の間を翻訳しながらPoCを本番へ運ぶ、FDE的な役割の定義や配置もご一緒します。

PoCは生まれるのに本番へ進まない、引き渡しの担い手が見えないとお感じの方は、ぜひAIxへご相談ください。



参考情報

SYS // AIx-OS

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